リネM【反王ブログ】:#8 リネージュと少年(前編)



リネージュMサービス前にあった、ちょっとした話。

総員、我が名はケンラウヘル。すなわち反王である。

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今日はリネージュMが始まる前にあった、リネージュに纏わる我の物語を語ろう。

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待ち合わせ

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5月上旬、新宿。

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この日は先日までの寒さが嘘のように暑く、夏の訪れを感じさせた。

雲一つない太陽の光は気持ちの良いものだが、道路から返ってくる熱はお世辞にも気持ち良いとは言えない。

5月だというのに半袖で外を歩く人を多く見かけた。

大きい都内の道路に面した喫茶店の窓際の席で、アイスコーヒーを飲みながら、我は人を待っていた。

ただ、心中は穏やかではなかった。

決して嫌とかそういう感情でもなければ、期待とも違った感情が入り混じっている。

複雑というのがピタリと当てはまるだろう。

待ち合わせ時間は13時。

家からは1時間前程度あれば着くこの場所だが、今日に限って朝早く目覚め、家にじっとしていることもできず、気づけば正午前には待ち合わせ場所についてしまったのだ。

席でPCを広げて仕事をしながらも、若干心は上の空。

我は昔を思い出していた。

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リネージュ1時代

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我はリネージュ1のユーザーであり、当時は大学生であった。

毎日のようにネットカフェに入り浸るような、俗に言う「廃人」の部類に入るだろう。

ただいわゆる効率ばかりを求める廃人ではなく、エンジョイ勢であることは間違いない。

INしてただ単にチャットでダベったり、時には皆で違うゲームをしたり、相談事に乗ったり。

そんな感じのユーザーだ。

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血盟も運用していた。

我はその血盟の2代目盟主で、初代がリアル都合で引退すると同時に引き継いだ形だ。

まぁ今思えば赤面しそうな話であるが、必死に盛り上げるために毎日必死だったのを覚えている。

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盟主というのは想像以上に裏で色々と相談をされることが多い。

相談というよりも、愚痴や面倒くさいことばかりだ。

誰誰がこんな事を言ったのがムカつく、あいつが気に食わない、誰誰が・・・

人間関係の相談事ばかり。

20歳で人生経験も浅い餓鬼でも、何とか解決してやりたいという一心で、全てにおいて真剣に受け止め、真剣に返していた。

馬鹿らしい、恥ずかしい話だが、当時の我は例えそれが顔の見えないネットゲームであっても本気だった。

結果として疲弊して自爆してしまったのは当たり前だが、今となれば全員、自分自身にも「肩の力抜いて、ゲーム楽しもうぜ」と言ってやりたい。

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少年

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その数ある血盟員の相談を受けている中、1人だけとても印象に残っている少年がいた。

彼の名前をAとしよう。

Aは我がリネージュ1をやっている頃、彼は大学生であった。

ほぼ同い年ながらあまりにも子供っぽいので、少年と名付けていた。

Aは典型的な「中二病」を患ったような態度や喋り方をする奴だ。

何せ15年以上前の話だ、リネージュ1での出会いの切っ掛けは正直覚えていない。

いつの間にかうちにいて、チャットでワイワイ書き込むような、ガチというよりもチャット勢という印象がある。

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Aアップダウンの激しい奴だった。

調子がいい時はすこぶる明るくて楽しい会話を繰り広げ、皆の輪の中心になっていた。

そして次の日突然ネガネガし始め、昨日まで和気藹々としていた相手に対しても毒づくような感じだ。

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盟主の立場からすると、こいつは問題児以外の何者でもない。

時折我から叱咤を喰らうこともしばしばだ。

叱咤されるとすぐ不貞腐れ、チャットなのにむすっとした態度が目に浮かんでくるような奴だった。

だが彼が違ったのは必ず、次の日に謝ってくる事だった。

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「昨日はごめん」

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所詮はゲーム、何か自分に不都合や居心地が悪いと、いくら自分が悪いと思っていてもすぐ抜けたりするのは慣れていたのだが、そういう者とは違い、彼は自分の非を認めて素直に謝ってくるのだ。

「ちょっとダメな弟」的な感情が我の中に芽生えていたのだろう。

普通だったら繰り返し何度も同じような事があると面倒くさくなってくるものだが、調子がいい時は本当に会話が弾んでこちらも楽しくなるものだがら、ついつい「しょうがないな」と許してしまうといった具合だ。

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彼は特に血盟内でも強い方ではなかったが、血盟内で群を抜いた特徴があった。

初心者・低レベル帯の者に異常に優しい。

それが彼の特徴だった。

ゲーム内のイベント中、皆必死に自分の装備強化、アデナ獲得に勤しむ中、彼は自分よりも初心者を優先して手伝いをしていた。

当然それを繰り返していればAはレベルや装備的に置いていかれ、初心者にもしばらくしたら抜かれる始末。

「お前は自分の事をもっと優先してやれ」と言っても頑なに聞かず、ただひたすらに初心者育成に力を入れ続けた。

初心者とのレベル差が激しければサブキャラを使い、またサブキャラでも前衛・後衛を相手に合わせて使い分ける。

この時間と情熱をメインキャラ一本に絞っていればどれだけ上がっていたのだろう。

一度初心者育成禁止令を出したこともあるが、彼は決まって「だが断る」とオタクっぽさ全開のチャットで茶化し続けた。

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憎たらしいが憎めない、そんな感じで毎日のようにゲーム内で話す仲だった。

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アップダウン

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彼と一緒にゲームをやり始めてから1年以上が経った。

もうここまで来ると家族と話している時間よりも長く、会ったことこそないにしろ、兄弟同然のような感覚だ。

いつでもINしたらいて、「ひ」(英語で「Hi」、挨拶)と言うだけでも互いに通じ合っていた。

むしろ「ひ」なんて言葉もいらず、ただ単にスペースだけの中身の何もないチャットだけでも「挨拶」と互いに分かる仲だ。

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この頃からあるツールがゲームに変化をもたらしていた。

Skypeである。

今ではボイスチャットなどはゲーム内に実装されていたり、Discordを使ったりと当たり前のようにあるが、当時はこのSkypeが流行し始めた頃だ。

携帯電話はあったが、今のLINEのような便利アプリはない。

そもそもアプリという概念すら存在していなかった時代だ。

携帯電話で話すと通話料がバカにならない。

だがこのSkypeというツールを使えば無料で人と好きなだけ話せる。

これは画期的であった。

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「皆でSkypeしよう」

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誰が言ったかは覚えていない。

だが「皆で会話しながらやったら面白いのではないか」という事から、自然にSkypeを使用するようになってきた。

「◯◯◯ってもっと爽やかなイメージあったわーwとか「お前男だったんかーい!」とか。

この声というのはキャラクターとチャットのイメージとは別の二面性が見られ、それだけでも盛り上がったものだ。

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ただ問題点としては当時のPCスペックに対してリネージュ1、そしてSkype共に動作が重い事。

当時最強のゲーミングパソコンのCPUPentium4

現在の格安ネットブックの方がスペックが高いくらいだ。

Skypeしながらリネージュをやるのは至難の技であったが、それでも皆毎日のようにSkypeをしながら話していた。

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自然とAと過ごす時間はチャットよりもSkypeで話すという方が多くなってきた。

ちょっともたついたような話し方で、声の第一印象は「ザ・オタク」というのを覚えている。

ネットスラングを平気で口にしまくる彼であったが、ここら辺はチャットでの印象と大差変わらない。

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そんな中でも彼のアップダウンが激しいのは変わらなかった。

ダウンの時はSkype通話には参加せず、チャットで毒を吐きまくっていた。

その代わりアップの時は物凄い饒舌でよく笑う。

これが「躁鬱」という症状だったというのは、当時の若き我には分からなかった。

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そのアップダウンは月日が経つにつれ激しくなる一方だった。

どちらかというとダウンの頻度と度合いが誰の目から見ても激しくなってきた。

周りの血盟員たちからも「あいつ何なの」と言われる状態だ。

そうなると負のスパイラルが生まれる。

決して悪い奴ではないのだけれども段々と彼と絡む人も少なくなり、そして彼自身も段々と孤独になっていく。

孤独になれば毒も多くなる。

そして更に皆から疎まれる。

裏では再三「お前、毒づくのそろそろやめろ」と伝えていたのだが、如何せんそれも聞かなくなってきたどころか、むしろ我に噛み付いてくるようになった。

今の我であったら面倒なので切ってしまう所だったが、お人好しだったのだろう、切ることもできず、彼は兄弟というよりも我の中で悩みの種の一つと変貌してしまった。

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久々の通話

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そんな日が続いた中、これも15年以上前の話なので覚えていないのだが、皆で和気藹々とチャットしている中、Aが書き込んだチャットが皆の堪忍袋を切らせた。

流石に擁護できないような、誹謗中傷に近いチャットだったことだけは覚えている。

基本的には怒らない我も、流石にこの時は頭にきた。

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「お前、ちょっとSkype出ろ」

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昔は毎日のように話していた彼であったが、最近はめっきり話す機会もなかった。

ただその時の自分の気持ちを素直に言うならば「話しかけて来なかった」ではなく、「自ら遠ざけていた」という思いがあったのは否めない。

この「自ら遠ざける」という経験、皆にもあることだと思う。

これはリアル社会でもそうなることもあるが、オンラインゲームでもそのような事は多々ある。

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Skypeで何回かのコールの後、Aが通話に出る。

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「なんだよ」

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明らかにやさぐれた、不満を隠そうともしない声。

ここまで攻撃的な声が彼から出てきたの初めてであった。

これは話しても無駄骨になると直感した。

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「関係ねぇだろケンには、言いたいこと言っただけだし」

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多少話してみたものの、やはり強固な姿勢は崩さない感じだった。

矛先は曲がりくねり、我への攻撃へと発展した。

あれはどうだ、あの判断はどうだこうだ、もっとこうした方が良かったああした方が良かった。

突然爆発する彼の不満。

若い我もSkype越しに怒りを露わにする。

が、そこはまかりなりとも1年以上の付き合いだ、徐々に互いの溜飲が下がってくる。

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A、お前さー、もう長いだろ、うちら」

「まぁ、そうだな」

「別にゲームだからとやかくは言わんけどさ、様子おかしいよ、最近。何があったか話せよ」

「なんもねぇよ」

「じゃあお前、今の気持ち話せる奴いねぇのかよ、大学とかに」

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しばらくの沈黙。

対人関係が上手い奴ではないとは思っていたが、リアルの方もそうらしい。

我も対人関係は上手い方ではない、ゲーム上だけはロールプレイという事で何故か上手くいったりしていたが。

そういう奴の気持ちは理解できる。

地雷を踏んでしまったか、我はちょっとだけ後悔した。

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「じゃあ俺しかいないな、お前の話をここまで聞いてくれるって奴は。感謝しろよA、今日はぶっちゃけてみろ、ほれ、気楽に話してみろ、ほれほれ」

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先ほどまで喧嘩腰だった空気とは一転、何故か我が気を遣って話しかけるという状態に。

こういう時にすぐ気を遣ってしまうのは悪い癖だとは理解していながらも、なるべく茶化しながら話せる空気を作る。

まぁこんな事ばかりしていたから我はリネージュで強くなれなかったのだが。

我の口癖は「俺にリネージュをやらせてくれ!」だったが、よくよく考えてみればいらん所で首をつっこみ、いらんところで大きなお世話をかき、自爆する日々だった気がする。

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すると突然、彼は泣き始めた。

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今の我だったらドン引きなわけだが、当時はこれでもかというくらい親身になって聞いていた。

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そこから3時間くらいか。

彼の話を聞き続けた。

簡単に話をまとめる。

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彼は高校生だった。

しかも高校1年、つまりは中学の時から我とリネージュをやっていた事になる。

そして高校生、とはいえど、高校は途中で辞めていた。

イジメが原因であった。

中学の時からイジメに遭って不登校、高校は少し離れた所に行ったが環境は変わらず、結果高校を辞めた。

更には両親の離婚やら、将来に対する不安やらで、かなり情緒不安定だったようだ。

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普通だったら「こういう奴=かまってちゃん」と思うだろう。

他にもそういう奴は有象無象にいたし、そういう奴から相談されても心のどこかでは流していたのだが、何故か彼だけは流せなかった。

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「それは大変だったな、まぁ疲れただろう。というかお前、高校生かよ」

「何か言いづらくて」

「しょーもない嘘つきやがってこのやろー」

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いつものノリで笑い飛ばそうにも肩透かしというか、いつもの会話の歯車が噛み合わない。

基本はネガティブな話ばかりだ。

うんうんと頷きながら、若かれし頃の我は「こいつを何とか助けてやりたい」という思いになった。

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■突飛な行動

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腹を割って話した日以降、二人だけで会話することは多くなった。

だが基本はネガティブな話ばかりだ。

死にたいなんて話もあった。

人間、とある切っ掛けで仲良くなったりすることはあるが、毎日こんな話をされていると苛ついてくるのも事実だ。

助けたいとかいう格好の良い事を思っていながらも、これが本音である。

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ある日の昼、リネージュにINしていたらSkypeで唐突に通話がかかってくる。

Aからだ。

その日の通話内容もネガネガとしたものだった。

こんなの毎日続けて何が変わるのか分からぬ、むしろ自分が疲れてしまうだけだ。

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「よし、Aよ

「何?」

「お前、◯◯県だったよな、住んでるとこ」

「うん」

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彼は西日本の、関西よりも西側。

お世辞にも都会とは言えない県に住んでいたのは知っていた。

我の血盟ではオフ会、特に都内では結構やっていたのだが、彼は当然交通の弁はもとより、高校生なので一人で来ることも困難だったのだろう。

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会話してても日を重ねるごとに酷くなるネガティブな話。

何とかしてやりたいという思い。

出口のない会話で時間を取られる苛つき。

でも何とかしてやりたいという気持ち。

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気づけば考えるよりも先に、こういう言葉が出てきた。

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「今から行くから、飯でも食おう」

「は?」

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書いていたら話が思ったよりも長くなってしまった。

サービス開始までは毎日更新すると決めたので、一旦ここで止めよう。

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後半に続く。

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