リネM【反王ブログ】:#10 ネットカフェと取材



昔はよくネットカフェに行っていたのをふと思い出した。

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総員、我が名はケンラウヘル。すなわち反王である。

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前回のブログは真面目な話になってしまったので、今回は昔の小話を一つ。

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■PCとスマホ

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昔はオフ会というのはあくまで皆で談笑したり、飲みやカラオケをするようなものであった。

実際のゲームはというとデスクトップパソコンが主流、ノートパソコンでの操作というのは当時のパソコン市場でいうととても高価な物であった。

むしろノートパソコンを持ち込んだとしてもWifiなどの設備はない。

LANカード」と呼ばれる物が必要であったが、これはとても高価な物で、ビジネス以外で使用する人はいなかったと言っても過言ではない。

まずもってWifi」という概念は存在せず、無線LANという名前しか存在しない。

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昨今はスマホの普及により、スマホゲームであれば場所を問わずどこでも一緒に皆で遊べる。

カラオケ店では大抵がWifiが整備され、オフ会用の電源タップ貸し出しなども珍しくない。

外で一緒にゲームをするという文化が根付いたのは、スマホ登場の前に、PSPのモンスターハンターが爆発的なヒットをしたからに他ならない。

それ以降、オフ会にて皆で端末、スマホを持ち寄って遊ぶというのは当たり前の世の中になってきている。

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ではその昔、デスクトップでしか遊べなかった2000年代前半ではどういう風に皆で遊んでいたか。

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そう、ネットカフェである。

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行きつけのネットカフェ

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ネットカフェは当時爆発的に増加していた。

ただの漫画喫茶に加えてネットができるパソコンを兼ね備えた設備。

夢のような設備だ。

それに加えてリネージュ1ではよく「ネットカフェキャンペーン」を行なっていた。

指定された公認ネットカフェからリネージュに入ると、その時間に応じてアイテムが貰えたり、ネットカフェからしか入れない特別なダンジョンなどが実装されていた。

そのため、我はオフ会の終わりなどは、オールがてらネットカフェに皆で行くというのがルーチンであった。

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都内のとあるネットカフェに入り浸る毎日。

それはいつしかオフ会があるからという理由だけではなく、何となく居心地が良くてついつい行ってしまう魅力があった。

ネットカフェには当時一緒にプレイしていた仲間が呼びかけた訳でもないのにいる状態で、オープンシートを常に陣取っていた。

ネットカフェに行けばオフ会が自然に発生するといったような具合だ。

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週に何度くらい行っていただろうか。

正直、週5くらいで通っていた覚えがある。

こうなると店長と仲良くなるのは時間の問題だ。

ネットカフェへ行って店長が受付にいると笑顔で「おかえり」と言ってくるまでになっていた。

何ならそのネットカフェの人手が足りない時は率先して掃除とか手伝ったりもしたし、新しい筐体のテスター(ゲームセンター用のPC筐体)なども喜んで引き受けていた。

オフ会になれば当然そこに大量の人を連れて行く。

ネットカフェ側からするといい顧客だっただろうと、自分でつくづくそう思う。

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そんなことをしていれば、色々と融通が利くようになるのも時間の問題だ。

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まずはネットカフェで配布するサービス券。

10枚貯まると1時間無料、といった具合だったのだが、あまりにも行き過ぎたためサービス券が1000枚くらいになったのを覚えている。

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「ケンくんさ、もうサービス券、面倒臭いから、割引にしちゃっていい?」

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という店長の提案により、何故か「我の血盟特典としてネットカフェ代が安くなる」というサービスまで実装された。

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そして普通だったらできないネットカフェの席予約も、電話一本で確定でできた。

オープンシートをパーテーションで区切り、グループシート的なものもわざわざ作ってくれた。

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何ならツケがきくネットカフェなどは、今後の人生ここだけだろうと当時の自分ですら思っていた。

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店長から頼み

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そんなネットカフェに入り浸りの日々が続いたとある日。

我はオープンシートでリネージュ1をプレイしていた。

その日は珍しく、客の知り合いは誰もネットカフェにはいなかった。

こういう日は延々と集中してリネージュをプレイするに限る。

基本的にネットカフェに行く時はマウスだけは自前のものを用意している。

当時はロジクールのマウスが高性能で愛用者が多く、我もそのうちの一人だった。

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リネージュでやることは狩りだが、これが基本的に必死の作業になる。

必死にプレイして1時間経験値1%も稼げない。

逆に死んだら一瞬で経験値13%が失われる事になる。

今思うととんでもない世界だ。

ポーションが尽きたら街に戻り、再びダンジョンへ繰り出す。

街に戻ったら一呼吸つくために、喫煙所に行って一服していた、その時であった。

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「ケンくん、ケンくん!」

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喫煙所のスライドドアを開けて入ってきたのは店長であった。

我よりも身長が高く、すらっとした眼鏡の紳士だ。

いつも笑顔で接客しているのだが、今日はいつにも増して笑顔であった。

店長がこういう顔をしている時は何かある時に決まっているのだ。

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「店長、何か手伝い?」

「実はケンくんにしか頼めない事があって、ぜひやってもらいたいんだ」

「俺にしか頼めないこと?」

「うん、そうなんだ」

「なになに、何があるの?」

「実はね」

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「テレビの取材を受けて欲しいんだ」

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取材依頼

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簡潔に言うと以下の内容だ。

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取材に来るのはまさかのNHK

しかも今日、今から3時間後。

取材の内容としては「昨今のネットカフェ事情」「オンラインゲーム事情」についてとのこと。

店長はゲームの概要などは分かるが細かい事が分からないので、ゲームに詳しい我を抜擢した。

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こういう流れだ。

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内容うんたらよりも、我は心浮きだっていた。

なんせテレビの取材、人生初めての出来事なのだ。

普段は別にテレビに出たいとも思っていなかったが、いざテレビの取材となると謎の期待感が生まれる。

当時の我の趣味はネットカフェ巡り、この通い慣れた店以外にも様々なネットカフェに精通している。

さらにゲームの話、特にリネージュについては任せておけと言わんばかりの知識量。

そして何故か湧き上がってくる「ここでリネージュを広めたい」という野望。

任せておけNCJ、バッチリ我が宣伝をしてやるからな、そんな思いが湧き上がる。

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場所はオープンシートの端っこの席で行われる。

そこで我が考えたのは、少しでも「この店の名前」と「リネージュ」の露出を増やすことだ。

この店のロゴの入ったマグカップを用意し、ロゴが正面に来るように角度を調整してキーボード前に置く。

PCにはリネージュのプレイ画面をと思ったが、おそらく小さくて見えないだろうということで、デスクトップの壁紙を大きいリネージュのロゴに変更した上で、ディスプレイの下に攻略本を並べる。

そして映るであろう壁の方には店とリネージュのポスターを貼る。

これで取材の受け入れ態勢は完璧に整った。

あとは取材陣が来るのを待つのみだ。

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取材開始

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このネットカフェはとある雑居ビルの8Fにある。

エレベーターで到着するとすぐに受付やらが見える。

そのエレベーターはオープンシートからも目視できる位置だ。

オープンシートからエレベーターが開くたびに、我は受付の方を覗き込んでいた。

人の出入りが激しい時はプレーリードックみたいな動きになっていたに違いない。

当時は20歳そこそこだ。

本当に浮き足立っていた。

リネージュで血盟員にNHKで取材を受けてくる、今ネカフェで待機中」などと連絡し、狩りどころの騒ぎではなくなっていた。

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指定された時間の15分前くらいか。

エレベーターから34名の人が降りてきた。

そのうちの一人が肩に掛けて使うような、いかにも「テレビ取材用のカメラ」という印象を受けた。

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刻は来た。

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血盟チャットにて「取材行ってくるわ!」と意気揚々に打ち込み、QUITボタンを押してリネージュを落とす。

画面に大きく出るデスクトップのリネージュロゴ。

店のマグカップ、リネージュの攻略本、ポスター。

全て完璧な位置どりであることを確認する我。

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取材陣は受付の店長に案内され、我の横のシートを陣取り始めた。

NHKの◯◯です、本日はよろしくお願いします」という女性レポーター。

何故かここで「ナメられるわけにはいかない」と、ミーハー魂爆発しそうな心を抑えて挨拶を返す我。

オープンシートの角の席に我、隣に女性レポーターが座り、その女性レポーターの後ろからカメラ、そして音声担当らしき人が陣取っている。

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「ではよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

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店長が遠くから見守る中、緊張の取材が開始されたのだ。

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「では早速なのですが、質問させていただきます」

「はい」

「ネットカフェには週何回くらい通っていますか?」

「大体週5とか、多くて毎日ですね」

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こんな感じで当たり障りない会話から始まる。

しかし、我が伝えたいのはそうではない。

オンラインゲームというもの自体がまだ世の中に浸透していなかった時代、むしろオンラインゲームに対する未知の嫌悪感が広まっていた時代だ。

ここで我が一発かましてやろうと思っていた。

決めセリフは「オンラインゲームを知らない人は人生の半分を損している」だ。

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気分はまさにジャンヌダルク、オンラインゲーム界のジャンヌダルクに我はなる。

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もっとディープな質問を欲していたのだが、話は何故か「戦争についてどう思うか」という流れになった。

すぐに頭の中で考える。

なるほど、マスコミというのはこうやって暗い印象をつけようとするのか、ゲーマー=人を殺すことに何も思わない=悪みたいな図式というやつか。

しかし、我はジャンヌダルク、この闇も振り払わねばならない。

我は流暢に「ゲームの世界での戦い」「非現実と現実の区別」について語る。

上手く切り抜けた、決め顔でカメラ目線を送る。

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「なるほど、ありがとうございます」

「いえいえ、これくらいなら。答えられるものであれば何でも答えます」

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心臓は激しく脈を打ち、緊張で汗をかいていたが、それを悟られてはいけない。

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「では、本題に入らせていただきます」

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本題?

これまではジャブだったというのか。

しかしこんなことで怖気付く我ではない。

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「はい、何でしょう」

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さぁ来い、我はジャンヌダルク

この取材に勝利し、オンラインゲーム、そしてNCJに光をもたらす者なり。

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「では早速なのですが」

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「ネットカフェ難民生活を始めた切っ掛けを教えてください」

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「は?」

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難民認定

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ネットカフェ難民。

家にも帰らず、ネットカフェで寝泊りを繰り返す若者。

これが社会問題として取り上げられていた時期だ。

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そして唐突のNHKからのネットカフェ難民認定。

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後々分かったのだが、このNHKの取材は何を隠そう「ネットカフェ難民特集の取材」であった。

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何を話そうにも我がネットカフェ難民であること前提で話が進んでいく。

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だが悲しいかな、ネットカフェ難民ではないと、断固として否定できない我がいた。

よくよく考えてみると、世間や社会から見てみると、我のようなネカフェゲーマーは難民なのではなかろうか。

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そのあとの取材内容はほとんど覚えていない。

さっきまで「オンラインゲーム界のジャンヌダルク」と息巻いていた若者は、いつの間にか「ネカフェ難民の守護神」と化し、ネカフェ難民擁護に必死になっていた。

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NHKの取材後、我はリネージュにINをした。

血盟員たちが囃し立てる。

NHKの取材どうだった!?」

「どんなこと聞かれたの!?」

取材前に自慢げに血盟員たちに話してしまった我を殺したい。

殺してやりたい。

我は静かに一言、こう血盟チャットに打ち込んだ。

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「NHKじゃなくてローカル局だったわ、だから皆見れないと思う。そんな事より狩り行こうぜ、狩り」

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まとめ

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よくよく思い返すと、ネットカフェという場所は我にとって感慨深いものがある。

様々な人間と会い、様々なドラマがあった。

何なら「ネットカフェ列伝シリーズ」として書けるくらいの量はあるだろう。

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昔はネットカフェがなければ一緒に遊べなかった。

だが今は違う、スマホ一台でどこでも遊べるのだ。

リネージュMで待ち受ける物語、次はどこが舞台になるのだろうか。

今から楽しみで仕方ない。

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こんなまとめ方でいいのか、我。

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今日の裏取引

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NHKの取材も終わり、撮影クルーがエレベーターに入って扉が閉まるのを確認した直後。

我は受付にいる店長めがけて猛ダッシュで走った。

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「おい、店長」

「ん?」

「どこが昨今のゲーム事情やらネカフェ事情なんだよ!ネットカフェ難民特集じゃあないか!」

「いや、難民みたいなもんじゃないケンくん」

「上顧客にそれ言っちゃう!?それ言っちゃう!?」

「いやでも助かったよ、ありがとう」

「ありがとう、じゃない!今後ここには来ないぞ!」

「ケンくん」

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受付に両肘を付け、両手で口元を隠すように手を組み、メガネを光らせながら、店長は我にこう囁く。

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「ネットカフェ難民割引、10時間無料、先着一名」

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「店長」

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店長と受付を挟んで正面を向いている状態で、店長と同じ格好をし、我はこう囁いた。

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/リネM【反王ブログ】:#10 ネットカフェと取材

「また用事があるときは、いつでも声をかけてくれ、店長」

「流石だ、ケンくん」

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以上。

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