動物に寄生する生物といえば、細長い寄生虫のようなモノが思い浮かぶのではないでしょうか。しかし海の世界では、意外な生物がサメに寄生して生きているようです。
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サメの心臓から「ウナギ」が発見される
サメといえば海の王者というイメージがありますが、そんな彼らに寄生し、体内を食い荒らす生物がいることが、これまでの研究で明らかになっています。科学メディア「Science Alert」によれば、以前から「サメの内部からウナギが発見される」という事例が複数発生しているとのこと。
1997年に記録された事例では、大型のアオザメ(Isurus oxyrinchus)を切り開いたところ、サメの心臓に2匹のウナギが寄り添い、サメの血をたっぷり吸っていた。10年後の2007年には、スモールトゥース・サンドタイガー(Odontaspis ferox)の心臓、体腔、筋肉からスナヒゲウナギが発見された。
— 出典:Science Alert
記事では「ウナギ」とされていますが、これはうなぎ目に属するコンゴウアナゴ(Simenchelys parasitica)という種類の魚です。コンゴウアナゴは本来、海底の海洋動物の死骸をあさって食べている生物で、このようにサメに潜り込むということはありません。
コンゴウアナゴがサメに寄生することは、1992年6月にオスのアオザメが北大西洋西部の海底から回収され、ニューヨーク州モントークに陸揚げされるまで知られていませんでした。このサメは395kgと大型で、延縄に引っかかっており、釣り針が口以外の場所にかかっていたため船に運び込まれたときにはすでに死んでいました。変色していたことから、サメはしばらく泥の海底にいたことがわかりました。サメは翌日まで冷蔵室に入れられ、死因(病気や寄生虫など)を慎重に調べられることになるました。
翌日、コネチカット大学の生物学者ジャニーン・カイラ氏と北東漁業科学センターのナンシー・コーラー氏によってサメが切り開かれると、その中に不気味な驚きがありました。サメの心臓の内腔に、体長21cmと24cmのふっくらと輝く2匹のコンゴウアナゴのメスの幼魚がいたのです。もちろん死んでいましたが、海から釣り上げられ、冷蔵保存されていたのです。しかし、それ以前は健康だったようです。さらに、ウナギはしばらくの間、サメの心臓の中で愉快に過ごしていた証拠もありました。
カイラ氏率いる研究チームは1997年に発表した論文に以下のように記しています。
アオザメの心臓に寄生するウナギの一種
この生物の胃は血で満たされており、少なくとも餌を食べるには十分な時間、サメの中にいたことを示唆している。胃の内容物はすべて凝固した血液であった。そして腸の内容物(食物や寄生虫)は見つかっていない。
— 出典:SPRINGER LINK
さらに証拠は他にもありました。このサメの心臓には、研究者たちが調査した他の6匹のアオザメの心臓には見られなかった損傷が見つかったのです。しかし、興味深いことに、科学者たちはウナギがサメの外から心臓の内側にどのように到達したかの兆候を見つけることができませんでした。研究チームは、延縄の針で傷ついたり死んだりしたサメを見つけ、その隙に潜り込んだのではないかと見ています。
サメが死ぬ直前か死後、2匹のコンゴウアナゴはサメを見つけ、エラか喉のあたりでサメに潜り込んだ。そして循環系に入り(求心性動脈か腹側大動脈を経由)、心臓に入り血液を消費した。
— 出典:SPRINGER LINK
こちらが実際の映像。コンゴウアナゴがサメに潜り込もうとしていることが分かります。
さらに他の事例も報告されています。サメの生息域と生息密度に関する2007年の論文で、その事件の詳細がわずかながら紹介されています。カナリア諸島のフエルテベントゥーラ近海で、体長3.7mのメスのサメが死んだ状態で漂流しているのが発見されました。このサメの「心臓、体腔、隣接する背筋の中」から数匹のコンゴウアナゴが発見されたのです。
英国BBCの気象学者でもあるサメ生物学者イアン・ファーガソン氏が率いるチームは以下のように記しています。
コバンザメの分布、個体数、生態
このサメはおそらく成魚だが、卵巣はコンゴウアナゴに食べられてしまったか、自然に退化したのか、完全に失われていた。死因にコンゴウアナゴが関与している可能性がある。
— 出典:SPRINGER LINK
通常、コンゴウアナゴは生きていない餌で成長するようです。例えば、日本沖で観察されたクジラの死骸では、餌を食べに来た生物の半分以上をコンゴウアナゴが占めていました。しかし、この深海の海底生物をもっと詳しく研究する価値はあるかもしれません。
コンゴウアナゴは生きている動物を食べる必要はありません。しかし、この寄生能力は、他の生物が義務的寄生、つまり生存のために他の生物にしがみつく絶対的な必要性を進化させたのと類似している可能性があるのです。カイラ氏は、「他の生物の中で短時間でも生きるこの能力は、将来的に偏性寄生虫の系統や真の宿主を生み出す可能性のある系統学的・生態学的変化の機会を提供するという意味で、潜在的に重要な進化的意義を持つ」と述べています。
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- Author:記事班02テクノロジー