海王星ではここ数年、とても奇妙な現象が確認されています。海王星の青い大気を彩る、淡い雲の筋がすっかり消えてしまったのです。この現象について、研究者が太陽の活動周期と関係があるのではないかと分析しています。
*Category:サイエンス Science *Source:Sciencealert ,Icarus
海王星の雲と太陽周期の関係性を研究者が報告
海王星は太陽から約45億キロ離れており、地球と太陽の平均距離の30倍強です。海王星では、2019年から中緯度の雲は薄れ始め、2020年までにほとんどの雲が確認されなくなりました。
この研究を率いていたハーバード大学の天文学者エランディ・チャベス氏は、この変動は、もうひとつの周期的変化である太陽周期の11年の活動とも関連しているのではないかと考えています。
遠くから研究するのは比較的限界があるものの、大気の傾向を特定することは可能です。チャベス氏たちは、ハッブル望遠鏡が1994年から、ケック天文台が2002年から、そしてリック天文台が2018年と2019年に収集したデータに焦点を当てて研究を行いました。
太陽の磁場はおよそ11年ごとに極性が反転し、フレアやコロナ質量放出、黒点がピークに達します。極が入れ替わると、太陽の活動は一時的に静かになり、その後再び太陽極大期へと加速します。
太陽は極大期に向けて、より強い紫外線を放出し、太陽系を照射します。研究チームの29年間の分析によると、海王星に雲が現れ始めるのは、強力な紫外線照射が始まってから約2年後とのこと。また、海王星の雲量とアルベド(太陽光を反射する量)には正の相関関係があるそうです。
「これらの驚くべきデータは、海王星の雲量が太陽の周期と相関していることを示す、これまでで最も強力な証拠です」とカリフォルニア大学バークレー校の天文学者イムケ・デ・ペーター氏は述べています。
This is extremely exciting and unexpected, especially since Neptune’s previous period of low cloud activity was not nearly as dramatic and prolonged.
— 出典:Sciencealert
「我々の発見は、太陽の紫外線が十分な強さを持つとき、海王星の雲を作り出す光化学反応を引き起こしているという説を支持するものである」
2.5太陽周期をカバーする研究チームの分析によると、海王星の雲量とアルベド(表面に入射した光が反射される比)は2002年にピークに達し、その後2007年に最低になったとのこと。そこから雲量とアルベドは再び上昇し、2015年にピークに達した後、再び沈静化しています。直近の2回の太陽活動極大は2001年と2015年でした。
しかし、この結果はある種の光化学的な現象を示唆しているものの、科学者たちがこの現象を解明するためにはいくつかのデータを解析する必要があります。例えば、紫外線との相互作用の可能性のひとつとして考えられるのが、雲が明るくなるのではなく暗くなる可能性です。また、海王星の深部から発生する嵐は、光化学的に誘発される雲とは無関係です。
継続的な観測は今も行われており、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡からの新しいデータもあります。これはどちらも、2025年に予想される次の太陽極大期に向けた研究チームの発見と一致しているとのこと。
「最近の画像では、特に北緯と高高度で雲が多くなっています。これは、過去2年間に観測された太陽紫外線フラックスの増加から予想されることです」とデ・ペーター氏は述べています。
海王星は太陽系の主要惑星の中で最も遠い惑星のため、地球に近い近隣惑星ほど研究が進んでいません。もちろん、海王星に探査機を送ることができれば、さらに詳細なデータが得られるでしょう。とはいえ、それはまだまだ先のこととなりそうです。
- Original:https://www.appbank.net/2023/08/21/science-innovation/2540432.php
- Source:AppBank
- Author:岩佐