正体不明の奇妙な症状を長年訴えていた女性の脳から、巨大な寄生虫が発見されたという報告が登場しています。
*Category:サイエンス Science *Source:Ars Technica ,The Guardian
謎症状に悩まされていた女性の脳から「ヘビの回虫」が見つかる
「Emerging Infectious Diseases」誌で報告されたこの症例は、2021年1月から始まっています。この女性は3週間前から腹痛、下痢、空咳、寝汗を訴えており、オーストラリアのニューサウスウェールズ州南東部にある地元の病院を受診しました。
血液検査では、何らかの感染症が疑われ、スキャン検査では肺に肺炎の徴候、脾臓と肝臓に病変が見られました。しかし、既知の微生物や寄生虫の検査は陰性で、ガンや自己免疫疾患の検査も陰性でした。彼女は原因不明の肺炎と診断され、いくつかの薬が処方されました。
しかし3週間後、発熱と咳が再発したため、別の病院に入院しました。ここでも医師は、肺、肝臓、脾臓の損傷といった感染症のシグナルを発見しています。彼女の血液中には、寄生虫感染を撃退することで知られる白血球、好酸球の数値が高かったため、治療が行われ、ヒト回虫感染の偽陰性を懸念し、抗寄生虫薬イベルメクチンが投与されました。
2021年半ばから2022年初めにかけて、この女性の肝臓と肺の状態は改善しました。しかし、それから間もなく、物忘れとうつ病の悪化が3ヵ月続きます。そこで脳MRIを行ったところ、彼女の右前頭葉に病変が拡大していたのです。2022年6月、彼女は手術を受け、脳外科医は彼女の脳から巨大な回虫を取り出しました。
その後の検査で、回虫はその特徴と遺伝子検査から「オピダスカリス・ロベルティ(Ophidascaris robertsi)」だと判明しました。
この回虫は、主にニシキヘビの食道や胃に生息しているものです。回虫の卵は、ヘビの糞から小型ほ乳類にうつります。幼虫はこれらのほ乳類の中で発育・定着し、ヘビが感染した獲物を食べることで再びヘビの体に寄生するのです。
医師たちの仮説では、この女性は自宅近くの湖で採取したワーリーガルグリーン(別名ニュージーランドホウレンソウ)を十分に洗わず調理しなかったか、手や調理器具を適切に洗わなかったために卵を摂取したのではないかとされています。
なお、女性の肺と肝臓の病変はしばらくして改善し、精神神経症状も持続したものの改善したとのこと。この女性のケースに関する報告書の共著者であるケネディ氏は、庭で採ったり収穫したりした食材をしっかり洗浄することの重要性を強調しています。
- Original:https://www.appbank.net/2023/08/29/science-innovation/2547409.php
- Source:AppBank
- Author:岩佐