現在、YouTubeには長時間の動画以外に、1分以内の「ショート動画」があります。ショート動画が登場したことによって、YouTubeは戦略を変えなければならない事態に追い込まれました。
ショート動画がYouTubeに与えた影響について、海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。
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「ショート動画」がYouTubeに与えた影響とは?
2017年から2021年にかけて、YouTubeの広告収入は約4倍になりました。しかし、2021年から2022年にかけては、広告収入が約4.5兆円と変わっていません。そして2023年の収益予測も増加することはないと予測されています。
YouTubeの収益鈍化は、高インフレと景気後退懸念による広告市場の軟化が原因だと考えられていますが、実はもう1つ大きな要因があります。その要因というのが「ショート動画」です。TikTokでショートフォームのコンテンツが爆発的にヒットし始めて以来、YouTubeを含めた多くのSNSが短い動画のサービスを提供しています。
YouTubeはショート動画を提供したことによって、ユーザーの囲い込みに成功しました。しかし、収益と財務の面で大きな後退となりました。なぜなら、長編動画とショート動画の収益には大きな差があったからです。
「Logically Answered」によると、長編動画の場合の広告単価は1000再生で約750円、ショート動画は1000再生で約5円とのことです。このことから分かるのは、YouTubeの広告収益というのは視聴回数よりも視聴時間の方が重要だということです。また、長編動画の場合は一本の動画の中に複数の広告が表示されることがあるため、単価はさらに向上することがあるとのことです。
YouTubeは全世界で毎日10億時間以上、視聴されています。この視聴時間がすべて長編コンテンツによるものだとすれば、YouTubeは毎年およそ2.7兆円の広告収入を生み出せます。しかし、この視聴時間がすべてショート動画によるものだとすると、YouTubeの広告収入は約4,000億円と大幅に減少します。いかにショート動画がYouTubeの収益に大きな影響を与えているかが分かります。
ただTikTokがある限り、YouTubeはショート動画を提供し続けなければなりません。では、今後YouTubeはどのような取り組みをして、今の状況を打開するのでしょうか?
YouTubeは、長編動画により多くの広告を表示する方向に向かっています。今までクリエイターは「プリロール」「ポストロール」「スキップ可能」「スキップ不可能」の広告を選択することができました。しかし11月からは、クリエイターはプリロール広告とポストロール広告のオン・オフしか選べなくなります。また、スキップ可能かスキップ不可か、動画の前か後か、あるいはその両方かについては、YouTubeの判断に委ねられます。
さらに、YouTubeは実験的にTVで30秒広告を導入したり、広告ブロックを利用するユーザーに対して動画再生を停止するなどの対応も行っています。このようにYouTubeは、長編動画の収益化を倍増させようとしているのです。
ショート動画の広告収益がひどい主な理由の1つは、広告主がショート動画に広告を出すことを躊躇しているからです。現在、広告主は長編動画やTVに広告を流した方が効果的だと考えています。
YouTubeは、時間が経てば広告主がショート動画広告でも長編動画広告やTV広告と同じ効果があると気づいてくれることを期待しています。しかし、そのようなシフトが起こるには数年かかるでしょう。
そして、YouTubeは有料会員であるプレミアムユーザーを増やすことにも注力しています。YouTubeの月間アクティブユーザー数は現在20億人で、そのうち8000万人がすでに有料会員です。YouTubeのコアユーザーは2億人から3億人といわれているため、YouTubeはすでにコアユーザーの25〜40%を有料会員に転換したことになります。YouTubeは今後も残りのユーザーを有料会員に転換し、収益向上に繋げようとしています。
YouTubeはショート動画を提供したことによって、TikTokにユーザーが流れることを防ぎました。その一方で、収益に大きな影響を与える結果になってしまったのです。
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- Source:AppBank
- Author:テクノロジー記事班