
ARCHOSAUR GAMES INC.は11月2日、女性向けゲーム『コードネーム:神不言』のチーフアーティストBing Liuさんらへのインタビューを公開したと発表しました。至近距離カメラでのキャラクター表現や、UE5を用いたモバイル端末向けのグラフィック実装などが語られています。
『コードネーム:神不言』は、Archosaur Games傘下のVVANNA事業部が開発する女性向けゲームです。
Unreal Fest Shanghai 2026での登壇と実機デモ映像
2026年に上海で開催された「Unreal Fest Shanghai 2026」で、同作が技術セッションに登壇しました。同イベントはEpic Gamesが主催する、Unreal Engineのゲームデベロッパーや関連従事者向けのイベントです。
セッションではBingさんが技術講演を行い、最新の実機技術デモ映像が2本公開されました。講演後には、Bingさん、チーフレンダリングエンジニアのQianさん、キャラクターアートディレクターのLinさんへのインタビューが実施されています。
『コードネーム:神不言』UFSH2026 発表・実機技術デモ映像 #神不言
『コードネーム:神不言』 実機スペシャル映像|ロストシティ、墜ちゆく影|UFSH2026 #神不言
至近距離カメラで求められるキャラクター表現
実機デモにはカメラがキャラクターのすぐそばまで寄るシーンがあります。Bingさんは、カメラが近づくほどモデルの精度だけでなく、すべてのディテール間の関係性が破綻なく成立していることが求められると述べています。
肌、眼球、涙腺(粘膜ライン)、唇、髪の毛やまつ毛などが、ライティングや表情が変わっても統一感を保つ必要があるとのことです。視線とまぶた・眼球の連動や、焦点距離・ライティングが異なる環境での顔全体の安定性にも注力しているそうです。
一方で、毛穴や肌のキメ、年齢を感じさせる特徴は意図的にコントロールし、過度にリアルなディテールでキャラクターの美しさが損なわれないようにしているとのことです。
Qianさんは、至近距離では細部まで見えるため、シャドウやAO(アンビエントオクルージョン)、GI(グローバルイルミネーション)といったレンダリングアルゴリズムの選定にも影響が及ぶと説明しています。
専用アイシェーダーで描く眼差し
眼球については、汎用的なソリューションを使わず、独立した専用のアイシェーダーが構築されています。Bingさんは、既存の手法ではフォトリアル寄りで硬い印象になるか、スタイライズによって瞳の奥行きや情報量が失われるかのどちらかだったと述べています。
専用シェーダーは、角膜、虹彩、強膜(白目)、涙腺をレイヤー分けして個別に制御できる構造です。環境に応じて変化する適応型瞳孔と、虹彩の光学的フィードバックも取り入れられています。
リョウの瞳
Linさんによると、リョウの瞳のハイライトは鋭くも抑制が効いており、収束した虹彩の光と影が近寄りがたい距離感を醸し出します。支配者特有の冷静さと威圧感を表現しているとのことです。
ソウヤの瞳
ソウヤの瞳孔デザインは情報量が豊かで、ハンターとしての鋭さと内面の葛藤を両立させているそうです。設定に寄り添うため、瞳の色が変化するディテールも盛り込まれています。
ヒサメの瞳
ヒサメの瞳は、SSS(サブサーフェス・スキャタリング/表面下散乱)とソフトなレンダリングをベースにしています。虹彩の光と影は温かく朧げで、光が瞳の奥を通る際にクリアな透明感を生み出すということです。
「美形スタイライズ」が目指すゲーム体験
講演では、リアルを超えた「美形スタイライズ」が本作の美的目標として語られました。方法論は「造形の再構築」「表情の再構築」「レンダリングの再構築」「衣装の連動」の4つのアプローチです。
Bingさんは、純粋なフォトリアルでは冷たい印象になったり、生身のマネキンのように見えたりしがちだと述べています。そのため、解剖学的な構造を保ちつつ、アートとしての洗練をくわえたと説明しました。
目指すのは、より温かみのある「感情のインタラクション」とのことです。プレイヤーが向き合うのは単なるキャラクターイラストではなく、表情が移ろい、一挙手一投足に個性が宿る「ひとりの人間」だとしています。
キャラクターごとの微表情
Linさんは、体験のうえで最も重要なのは「表情の再構築」だと述べています。3人には共通の表情ライブラリがなく、すべての微表情のセットがそれぞれの設定に合わせて作られているそうです。
リョウは感情を大きく表に出すことが少なく、眉山や目尻がわずかに動く程度で抑制された気遣いが滲み出ます。ソウヤの表情はメリハリがあり緊張感に満ちていて、警戒心と心の奥にある優しさの間で揺れ動くとのことです。
ヒサメの表情は全体的に柔らかく穏やかで、感情の機微は目元の光と影の揺らぎに秘められているそうです。
質感と衣装の連動
レンダリング技術によって、肌や布地、アクセサリーに繊細な質感が与えられています。衣装の連動技術により、動作に合わせた自然な布の変形も実現しているとのことです。
MetaHumanとSubstrateを土台にした表現
UE5の「Substrate」マテリアルシステムと「MetaHuman」キャラクターシステムは、本作の映像表現における重要な技術基盤です。Bingさんによると、アートチームとエンジンチームは目標を定義する初期段階から共同で参加しています。
アート側が雰囲気やマテリアルの改善点を明確にし、エンジンチームが技術的なアプローチとパフォーマンスの限界値を評価します。小規模なプロトタイプで検証したのち、実際のキャラクターやライティング、ストーリーのカットシーンへ組み込み、イテレーションを重ねたそうです。
MetaHumanとの互換性
初期段階でリスクが高かったのは、大幅な美形スタイライズを施したあとも、MetaHumanのDNAやリグ(骨格)、フェイシャル(表情)のシステムと互換性を保てるかという点でした。構造の再構築と動的検証を繰り返し、MetaHumanの技術基盤を維持しつつ、キャラクター固有の造形と「Expression Layer(表情レイヤー)」を構築したと説明されています。
キャラクターごとに専任チームが設けられ、351種類のブレンドシェイプすべてに個別のカスタマイズ処理が行われています。
既存の基盤の上には、RBF(放射基底関数)を用いた衣装・アクセサリーの連動や、Substrateベースの多層構造の布地といった拡張も施されているとのことです。
ファンタジー表現の課題
Qianさんは、逆さまに浮かぶ都市(逆転都市)や特殊なエフェクトなどでは、レンダリング手法を個別にカスタマイズする必要があると述べています。汎用パイプラインで解決できない場合は、現象を観察して法則性を導き、さまざまなアルゴリズムや技術的なトリックでシミュレートするそうです。
たとえば、ソウヤの肌を伝う汗は、デュアルレイヤーノーマル(二層法線)で水滴と肌を別々に処理してから結合しています。液体のコースティクス(集光模様)効果もシミュレートし、水滴が肌に付着しているような立体感を目指したとのことです。
ロケーションごとのライティング
本作には遊園地や高層ビル、ハイウェイ、海辺など、多様な近未来風のロケーションが登場します。Bingさんは「環境がキャラクターに与える影響は、リアルに変化しなければならない」という原則を挙げました。
環境ごとに色温度や光の方向が異なるため、キャラクターには補助ライトを当て、肌の質感や瞳のハイライト、髪、衣装のマテリアルが美しく見えるよう調整しているそうです。
一方、Qianさんによると、アルゴリズムはすべてPBR(物理ベースレンダリング)に統一されています。これにより、異なるスタイルやロケーションでもキャラクターと背景の調和が保たれるとのことです。
モバイル端末への対応と開発体制
モバイル端末への対応は、プリプロダクションの段階からPCとモバイルの両プラットフォームを考慮して進められてきました。Qianさんは、キャラクターに関する表現を最優先で保証し、可能な限りPCの最高峰のクオリティに近づける方針だと述べています。
モバイルのスペック上、ネイティブの手法をそのまま適用できない場合でも、表現を削らず別の技術的アプローチに置き換え、視覚的にほぼ同等の見た目を実現するそうです。
過去作の経験とNüwa Lab
『コード:ドラゴンブラッド』『きらめきパラダイス』を経てUE5へ移行したものの、すべてをゼロから作り直したわけではないとBingさんは述べています。従来の基準や制作体制をベースに、さらなるアップグレードを図ったとのことです。
Qianさんは、とくに『きらめきパラダイス』で培ったエンジン運用のノウハウやパイプライン構築力が、本作の優れた基盤になったと語っています。
Linさんによると、同スタジオは今年2月に組織体制のアップグレードを完了し、正式に「VVANNA事業部」となりました。同時に、エンジンの技術的課題を専門に解決する特化チーム「Nüwa Lab」も設立されています。
Nüwa Labを軸に、UE5の深層部分でエンジンのカスタマイズとイテレーションが続けられています。最先端の技術を実装・検証して再利用可能な独自技術アセットを蓄積する制作フローが、美形スタイライズキャラクターの制作を支えているそうです。
- Original:https://www.appbank.net/2026/11/02/game/3152489.php
- Source:AppBank
- Author:Appbank編集部