ウクライナは12月に入って、ロシア国内にある軍事基地を無人機(ドローン)で攻撃しました。ロシアに対する初めてのこの大規模な遠距離攻撃には、特殊部隊も関与していたのではないかと報じられています。
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ロシア基地攻撃に使われた「ソ連時代の偵察機」改造ドローン
米紙「The New York Times」によれば、ウクライナは12月5日、ロシア国内にあるの2つの軍事基地を無人機(ドローン)で狙ったとのこと。
ロシア国防省とウクライナ高官によると、ウクライナは月曜日、9カ月に及ぶ戦争で最も大胆な攻撃をロシア領内で行い、数百マイル離れた国内の2つの軍事基地を無人機で狙った。
同メディアが共有した情報によると、ウクライナが発射した兵器はソ連時代のジェット機で、ウクライナ国境から約480km離れたリャザンとエンゲルスの基地を狙ったものだったそうです。ロシア側は無人機を迎撃したものの「落下と残骸の爆発で」2機が「わずかに損傷」し、軍人3人が死亡、4人が負傷したと発表しています。
注目すべきは、このドローンが「西側諸国が供給した最新鋭兵器ではない」という点。この機体は、ウクライナの国有兵器メーカー、ウクロボロンプロムの開発したものだとみられています。
ウクライナの西側支援者は、紛争にこれ以上深く巻き込まれることを避けようと、ロシア領内を遠くまで攻撃できる長距離兵器の供給を拒否している。しかしウクライナの国有兵器メーカー、ウクロボロンプロムは10月、165ポンドの弾頭と600マイル以上の射程距離を持つ無人機の「開発の最終段階に入っている」と述べ、日曜日にはこの兵器のテストを完了したと発表した。
米政治系メディア「POLITICO」が共有した関係者の情報によれば、この攻撃に使われたドローンは、ソ連時代に残された「ツポレフTu-141偵察機」を改造したものとのこと。
Tu-141は比較的大型の中距離偵察機で、超音速で飛行し、半径1,000km以内の偵察任務に対応するよう設計されています。同機体は1979年から1989年まで、主にソビエト連邦の西側国境で使用されていました。
この攻撃は、ウクライナ側がモスクワ基地に攻撃を仕掛ける能力を得ていることを実証するものです。しかし、完全に無人でコントロールされているわけではありません。「The New York Times」が取り上げた匿名の関係者によれば、この無人機は「基地に近い特殊部隊が無人機を誘導して攻撃した」とのこと。
無人機はウクライナ領内から発射され、少なくとも1機は基地に近い特殊部隊が無人機を誘導して攻撃したと、機密情報を伝えるために匿名を条件に当局者が語った。
問題はこのドローンを「だれが誘導したのか」という点です。この攻撃には、イギリスの特殊空挺部隊SASなどの協力があった可能性もあります。敵国深くに侵入して、レーザー誘導ミサイルの「マーカー」を設置するのは、湾岸戦争のころまで特殊部隊の重要な任務でした。
「トマホーク」のようなGPS誘導による精密がミサイル攻撃能力をもたないウクライナですが、旧式とはいえ英米が得意とした「特殊部隊+ミサイル」のノウハウを受け取っていたのかもしれません。
また、ウクライナはロシアと戦争しているものの、アメリカやヨーロッパとも交渉中です。ドローンでモスクワを攻撃できるようになったウクライナは欧米に対して「我々は妥協した和平交渉をするつもりはない」という強烈なメッセージを送るために今回の「Tu-141」をしたと考えられます。
旧式の無人機だけでロシアを全滅させることは不可能ですし、戦局を大きく動かせるかもあやしいでしょう。ただし「ウクライナに徹底抗戦以外の選択肢はない」というメッセージを敵国と支援国の両方にメッセージを送る方法としては極めて有効だったといえそうです。
- Original:https://www.appbank.net/2022/12/19/technology/2358293.php
- Source:AppBank
- Author:テクノロジー記事班
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