損害4.6兆円、それでもGoogleが広告ブロッカー「AdBlock」を潰さない腹黒理由



広告ブロックソフトである「AdBlock(アドブロック)」は、収入の多くを広告料に頼っているGoogleに多くの損害を与えています。しかし、GoogleはAdBlockをあまり気にしていないようです。実際、AdBlockはChromeウェブストアで今もなお提供され続けています。

なぜ、Googleは収入を奪うAdBlockを放置し続けるのでしょうか?その理由について、海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。



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*Category:テクノロジー Technology *Source:Logically Answered,wikipedia

GoogleとAdBlockにはどのような関係があるのか?


2012年当時、AdBlockはGoogleに8億8700万ドル(約1,100億円)の損害を与えました。そして、2015年にはこの損害は66億ドル(約8,700億円)にまで増加し、2020年には350億ドル(約4.6兆円)になったといわれています。現在、インターネットを使う42.7%が何らかの形でAdBlockを使用しているとのことです。

合理的な企業であれば、AdBlockが効果を発揮しないようにするための措置を講じるはずです。しかし、GoogleはAdBlockを規制していません。それどころか、GoogleはAdBlockをサポートしています。なんとGoogleは広告をホワイトリストに登録するために、毎年何千万ドルもAdBlockに支払っています。


なぜ、Googleがこのような行動を取るのでしょうか? 実は、AdBlockはGoogleにとって有益な存在なのです。

Chromeは、あらゆるデバイスで60%以上のシェアを持つ、世界で最も人気のあるブラウザです。そんなChromeは、SafariやEdgeとは違い完全に広告ビジネスに支えられています。Appleは広告事業への参入を計画しているようですが、まだ実質的な参入には至っていません。また、マイクロソフトは、企業向けビジネスに移行したため、基本的に消費者ベースの収益はもう必要ありません。

しかし、そこに大きな脆弱性があります。もし、GoogleがChromeのAdBlockを許可しなくなった場合、AdBlockは他のすべての企業にとってのアピールポイントになります。そして、各社がアプリストアでAdBlockを紹介したり、ジャーナリストにお金を払ってブラウザの比較をさせたりするかもしれません。

そのようなコトをされると、現在AdBlockを使っている3億5千万人のユーザーの多くが、他のブラウザへの乗り換えを検討したり、あるいは乗り換えたりする可能性があります。そのような事態を避けるために、GoogleはAdBlockを簡単に利用できるようにしています。


また、GoogleがAdBlockを規制しないことによって、新しいブラウザが誕生することを抑止しています。Appleやマイクロソフトのブラウザは、既存の企業が後付けで作ったものなので広告を必要としていません。しかし、新しいブラウザベースの会社を作るとしたら、それは広告を中心に据えたものになる可能性が非常に高いです。そして、もしChromeに対抗するチャンスがあるのなら、AdBlockを許可する必要があります。

ただ、GoogleがAdBlockを容認できるのは3,000億ドル(約40兆円)近い売上を出しているからです。新規事業者には、到底真似できません。つまり、GoogleはAdBlockを許可することで多くの収益を犠牲にしますが、その代わりにより価値の高いマーケットシェアを維持できているということです。


さらにAdBlockによって、Googleは広告パフォーマンスを大幅に向上させることができています。そもそもAdBlockを利用するユーザーは広告を見たくない人です。そのようなユーザーに無理やり広告を見せてもコンバージョンは下がります。Googleの広告は、一般的にクリック課金と呼ばれるモデルを使用しているため、広告がクリックされた場合にのみ報酬が発生します。このモデルでは、広告主は1クリックあたりいくら払うかを入札し、最も高い入札をした人が検索結果やYouTubeなどで最初に表示されることになります。

そのため、1クリック1000ドル(約13万円)などという高額で入札すれば、Googleはそれを10億人に押しつけることができます。しかし、一人もクリックしなければ、Googleは一銭も受け取ることができません。

逆に、1クリック1ドル(約132円)という安価で入札して、100万人に向けて広告を出すこともできます。この広告のクリック率が10%だった場合、Googleは100,000ドル(約1,300万円)を受け取ることができます。このように、Googleの報酬は視認性ではなく、結果に対して支払われるのです。

つまり、Googleは広告をより効果的にユーザーに届けたいと考えているということです。そして、これを行う最も簡単な方法の1つは、広告を見たくない人々をカットすることです。これらの人々は、単にインプレッションカウントを膨らませ、クリックスルー率を高め、広告主を遠ざけることになります。


結局のところ、GoogleはAdBlockに対して非常に洗練されたアプローチをとっています。GoogleはAdBlockを利用して、自分たちの市場シェアを守り、広告パフォーマンスを高め、同時にAdBlockと連携して、広告をホワイトリスト化することもできました。

GoogleはAdBlockを排除することが解決策ではないことを理解しています。Googleの目標は、AdBlockがあっても使う必要を感じないほどの広告体験を提供することなのです。




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