ある時突然始まる「しゃっくり」。なかなか煩わしいものです。効果があるかないかは別として、しゃっくりを止める方法はたくさん知られています。すぐに止まればいいですが、長期間続くものには注意が必要です。
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「68年間」止まらなかったしゃっくり
しゃっくりは反射弧と呼ばれる神経経路から始まると考えられています。身体的には、呼吸筋が不随意に収縮し、声帯と声帯の間にある開口部(声門)が突然閉じ、「ヒック」という音が出ます。しゃっくりは、アルコールの飲み過ぎ、食べ過ぎ、咀嚼時の空気の吸い込み過ぎ、薬の服用、あるいは興奮や笑いなど、収縮の引き金となるようなことが原因で起こります。この現象の医学的名称はシングルトゥス(singultus)と言い、ラテン語のシングルト(singult)「すすり泣きながら息を整える」に由来します。
しゃっくりは単独で起こることもあれば、1分間に4~60回というかなり規則的なリズムでまとまって起こることもあります。お腹の中にいる赤ちゃんでもしゃっくりをすることがあり、これは呼吸の練習をしていると言われています。
一般的な治療法としては、冷たい水を飲む、うがいをする、紙袋に息を吹きかける、息を止める、催眠術や鍼治療などがあります。誰かに驚かせてもらったり、くすぐられたりする方法もありますが、どれも効果的で安全だという証拠はありません。
近年開発された治療法に、HiccAwayという特殊なストローを使ったものがあります。初期の評価では、90%の人がHiccAwayはどの民間療法よりも効果的であると答えましたが、さらなる研究が必要でしょう。
通常のしゃっくりであれば、何もしなくても我慢すれば治ることが多いですが、長く続くしゃっくりには注意が必要です。
成人のしゃっくり
長期のしゃっくりはまれですが、うつ病、体重減少、睡眠不足を引き起こす可能性のある障害のある状態です。心筋梗塞、脳腫瘍、腎不全、前立腺がん、腹部手術など、さまざまな病理学的状態が慢性的なしゃっくりを引き起こす可能性があります。
慢性的なしゃっくり(48時間以上続く、または1ヵ月以上続く)は、苦痛を伴い、疲労や体重減少を引き起こすだけではありません。ある研究では、慢性しゃっくり患者の80%に食道または胃の異常が認められました。そしてそのうちの3分の2は治療可能でした。慢性的なしゃっくりは根本的な医学的原因を突き止め、治療することが最も有用なようです。
あるまれなケースで、3週間しゃっくりが止まらず、救急を受診した患者がいました。この患者は心臓発作を起こしていたことが判明しました。イギリスのあるミュージシャンは3年間しゃっくりに悩まされていましたが、脳腫瘍が原因だと判明し、手術で治ったのです。
そして、原因不明で68年間止まらなかったというケースもあります。1922年6月13日、ネブラスカ州の農場で働いていたチャールズ・オズボーンという男性は、仕事中にしゃっくりをし始め、1990年まで止まらなかったというのです。複数の医師を訪ねたものの、治療法は見つかりませんでした。ある医師は一酸化炭素と酸素を使ってしゃっくりを止めようとしましたが、安全に呼吸することができなかったと伝えられています。しかし彼は最終的に、しゃっくりを最小限に抑える呼吸法を学んだそうです。
1990年2月、オズボーン氏のしゃっくりは原因不明のまま突然止まりました。そして彼は、しゃっくりとは無縁の1年と少しを過ごした後、1991年5月に亡くなりました。一生のほとんどを「しゃっくり」とともに過ごした彼は、生涯で推定4億3千万回のしゃっくりを経験したとのことです。
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