多くの大企業のCEOは、高い給与をもらっています。しかし中には、現金給与が「1ドル」のCEOもいます。これらのCEOが給与を「1ドル」にこだわる理由を、海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。
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なぜCEOは1ドルの給与で満足するのか?
2020年、ティム・クックは2億8100万ドル(約380億円)という報酬を受け取りました。しかし、このうち現金はたった300万ドル(約4億円)です。つまりクックの報酬の約1%が現金だということです。
これは、一般人と比較するとかなり極端ですが、大企業のCEOの多くは、少額の現金給与を望んでいます。現に、イーロン・マスク、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンの現金給与は、1ドル(約130円)だけです。
ただCEOの給与は、これだけではありません。彼らは、数億ドル、数十億ドルの価値の株式を受け取っているのです。イーロン・マスクは、230億ドル(約3兆円)の株式報酬を受け取っています。また、株式報酬を取得していない年でも、旅行や住宅などにかかる費用が補償されています。
では、なぜ現金で1ドルしか給与を貰わないのでしょう。現金で1ドルが支払われるという手法は、1900年代初頭から存在していました。最初に大きな注目を集めたのは第二次世界大戦の時です。
ただ、今の1ドル給与のCEOが他の手段で桁外れの報酬を得ているのとは異なり、最初の1ドル給与は本当に1ドルしか得ていませんでした。1ドルの報酬を得ていたのは、基本的に政府のためにボランティアをしていた人たちです。法律により政府は無給のボランティアを雇うことができませんでした。そのため、政府は1年に1ドルを支払っていたのです。
例えば、ウィリアム・ナッツソンもその1人です。彼は、国防諮問委員会から中将になり、その後生産局長になりました。そして戦争に参加する前は年間3,000機しか生産していなかった航空機が、戦争が終わる頃には年間30万機を生産するという実績を残しています。
また、自動車産業は石油危機で壊滅的な打撃を受けていました。最も打撃を受けたのはクライスラーという企業です。クライスラーは政府からの救済措置を必要とするほど経営が悪化していたため、CEOであったリー・アイアコッカは給与を1ドルに減らしました。リー・アイアコッカは、よく知られていないかもしれませんが、この人は自動車産業の絶対的な象徴です。
1ドルの給与の次の顕著な例はスティーブ・ジョブズです。ジョブズが1996年にAppleに復帰したとき、会社は倒産の危機でした。そのため、彼が1ドルの給与に落ち着いたのは不思議ではありません。そしてジョブズは、ピクサーのおかげですでに億万長者でした。
そして、ITバブルが崩壊するにつれ、多くのCEOが1ドルの給与を受け取るようになりました。ただ、最小限の給与という意図の1ドルは、この頃が最後です。
現在のCEOは、戦略の1つとして1ドルの給与を選んでいます。
1ドル給与のCEOは、他の手段を通じて大幅に大きな利益を受け取っています。そして、監視を最小限にすることができるのです。
1ドル給与のCEOと普通のCEOの平均給与の差を比べてみると、普通のCEOの方が、給与が62.3万ドル(約8千万円)、ボーナスが94.1万ドル(約1.3億円)、その他の現金報酬が11.7万ドル(約1.6千万円)、合計で168万ドル(約2.3億円)多く貰っているようです。
しかし、1ドル給与のCEOは、オプションが51.5万ドル(約7千万円)、新株予約権153万ドル(約2億円)、その他の非現金報酬で150万ドル(約2億円)、合計で355万ドル(約5億円)も多く非現金報酬を受け取っています。
1ドルの現金給与は、世間の監視を最小限に抑えるためだけではなく、収入を多く得るために必要なことなのです。
テスラを例にとると、テスラが初めて通年で黒字になったのは2020年でした。テスラがマスクに年間数億ドル、ましてや230億ドル(約3兆円)を支払う余裕があるでしょうか。テスラは今でも170億ドル(約2.3兆円)の現金しかありません。
もしマスクに230億ドル(約3兆円)を支払うとしたら、文字通り手元の資金をすべて使い果たしてしまうでしょう。しかし、オプションや株式の話であれば可能です。
ただ、これは会社が株式市場から、従業員に株を授与するようなものではありません。企業は、従業員や役員の報酬制度に従い株を発行しています。つまり、会社が株を発行しているからといって、自由に発行できるわけではないということです。
多くのCEOは、給与として現金を受け取らない代わりに、株式を受け取っているのです。また、株主もこの支払い方法に同意しています。
マスクに230億ドルが支払われた時、テスラの時価総額は1兆ドル(約100兆円)で推移していました。そのため、マスクがこのような巨額の支払いを受け取るには、株式を約2.3%希釈する必要がありました。ただこれは極端な例です。
しかし株式報酬は、企業が損をすることなく、臨時の給与を提供することができます。そう考えると、実に素晴らしい仕組みです。
- Original:https://www.appbank.net/2022/10/11/technology/2266678.php
- Source:AppBank
- Author:テクノロジー記事班
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