ソ連空軍が1959年に開発した「Tu-22」という超音速爆撃機には、「超音速酒運搬機」という異名が付けられています。その理由について、海外YouTubeチャンネル「Not What You Think」が解説しています。
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196リットルもの「ウォッカ」を積んだ爆撃機とは?
ソ連は1949年8月に初の原子爆弾実験に成功します。しかし、まだアメリカにとって脅威ではありませんでした。なぜなら、ソ連はまだ核兵器をアメリカまで運ぶ手段を持っていなかったからです。
そこでソ連は3年でTu-16爆撃機を開発します。Tu-16は航続距離が約4,800㎞もあり、アメリカの領土に核兵器を投下することができます。しかし、その頃アメリカはTu-16よりも速く飛行できる超音速戦闘機を導入していました。つまり、Tu-16ではアメリカに対抗できないということです。
そのためソ連も超音速爆撃機を開発します。そして開発されたのが「Tu-22」です。しかしTu-22の開発は容易ではなく、試作機の飛行中に機体から大きな音が鳴り、パイロットを残したまま墜落するという事故も発生しました。
またTu-22は乗員を機体の下から乗せなければならないという不便な設計にもなっていました。この設計には搭乗しづらい以外にも大きな欠点があります。それは緊急時に脱出システムを下向きに作動させなければならないことです。通常、飛行機は上向きに脱出するため低高度でも脱出可能です。しかし、下向きに脱出するTu-22は最低でも約350mの高度が必要でした。これは離着陸時に何か問題が発生した際、パイロットが射出座席を使用できないということです。
さらにTu-22の乗員構成にも問題がありました。Tu-22はパイロットが1人、ナビゲーターが1人、砲手が1人の計3人の乗員で構成されています。爆撃機としては異例の副操縦士がいないのです。パイロットが1人だったことが、Tu-22の墜落のいくつかを直接的あるいは間接的に引き起こしたのではないかと疑われています。
このようにTu-22は一般的な爆撃機とは違うところが多々あります。しかし、最も違うところは196リットルの「ウォッカ」を積んでいたことです。
Tu-22にはコックピットを冷やす空調システムが設置されており、その仕組みはエンジンからの熱風を「60%の蒸留水と40%のエタノールを混ぜたタンク」つまりウォッカが入ったタンクに通すというものでした。アルコールは熱を吸収し、飛行1時間あたり約37リットルの割合で蒸発し、冷たい空気がコックピットに入ります。
そして着陸時には、タンクに残ったウォッカを抜き取り、フライトクルーと地上スタッフで飲み合っていました。
しかし、Tu-22の乗組員がこの「冷却液混合物」を飲んで泥酔に陥った事例が多数あったため、ソ連空軍当局は厳しい取り締まりを行ったとのことです。
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