核兵器、公害、病原体の蔓延など、人類に壊滅的な被害が出たことは数多くあります。しかし、一日で最も多くの死者数を出したものは、約500年前に中国で発生した地震だといわれています。
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たった数秒で10万人が死亡した大地震
1556年1月23日の朝、当時「中国文明発祥の地」とされていた中国の陝西省を大地震が襲いました。地震は数秒しか続きませんでしたが、直接の被害による死者は10万人と推定され、それに続く地滑り、陥没穴、火災、人々の移動、飢饉の連鎖で、合計83万人が亡くなったと推定されています。
もちろん、これは第一次世界大戦や第二次世界大戦、あるいはパンデミックや飢饉、洪水といった大きな出来事の総死亡者数には到底及びません。しかし、1日の被害で考えた場合、この陝西省地震は、人類史上最も死者が多かった日であると考えられています。
マグニチュードは8.0から8.3だったと考えられています。それ以前にも、それ以後にも、より強力な地震は数多く発生しています。しかし、当時の地質と都市設計により、華県・渭南・華陰周辺にあまりにも甚大な被害をもたらしたのです。
「History.com」によれば、紀元前1177年までさかのぼる「地方紀要」には、地震による破壊が非常に詳細に記述されていたとのこと。「地方紀要」からの引用を翻訳すると、以下の通りです。
1556年陝西省地震
ある場所では、地面が突然隆起して新しい丘ができたり、突然沈んで新しい谷になったりした。またあるところでは、小川が一瞬にして流れ出したり、地面が割れて新しい溝ができたりした。小屋、官舎、寺院、城壁が突然崩壊した。
— 出典:wikipedia
また深さ18m以上の亀裂が地面に開いたと記録されています。華県では、すべての建物が倒壊し、震源地に近いところでは人口の約60%が死亡したと報告されています。マグニチュードは比較的低かったものの、地震の強さや揺れを示す修正メルカリ震度階級ではXI(極大)に指定されています。
もっとも死者の多い地震となった理由
震源地は、中国中北部の黄土高原を横切る地質学的にユニークな魏河流域です。ゴビ砂漠の下に位置するこの高原は、砂漠から浸食された風塵が堆積してできたシルト状の堆積物である黄土で形成されています。この高原は現在、定期的に地滑りを起こすことで知られています。しかし、当時は多くの家屋が柔らかい黄土の崖に直接建てられ、ヤオトンと呼ばれる横穴式住居が作られていました。地震は未明に発生し、ヤオトンの中には多くの人がいました。そしてヤオトンの崩壊と共に生き埋めになってしまったようです。さらに、当時の都市の建物の多くは重い石でできていました。そのため倒壊したときに多くの破壊を引き起こしたとのことです。
この地域には、北華山断層、ピエモンテ断層、そして威河断層という3つの大きな断層が走っています。1556年の地震について1998年に行われた地質学的分析では、北華山断層が影響を与えたと結論づけられました。
北京大学の研究者たちは、「活断層の可能性を考慮し、現在断層が活動していることから、この地域で再び起こりうる大地震に備える必要がある」と話します。またHistory.comによれば、陝西省大地震は、地震の原因や、将来このような災害による被害を最小限に抑える方法を探るきっかけとなったと記載しています。石造りの建物は、竹や木など、より柔らかく地震に強い素材に置き換えられたとのことです。
人類史上最悪の日は、地球環境災害や人為的災害などの私たち人間によって引き起こされたのではなく、人間にはどうしようもできない自然災害によるものだったのです。
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