EVなどの普及が進むにつれ、バッテリーの製造に必要なレアメタルの需要が急増し始めています。そんなレアメタルに変わる素材を、米ローレンス・バークレー国立研究所が開発しています。
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「岩塩」をレアメタルの代用にする研究
現在の一般的なバッテリーに使われている高密度カソード(正極)は、リチウム金属酸化物でできています。このリチウム金属酸化物は、リチウムとコバルト、ニッケル、その他の金属が交互に繰り返し積層された結晶構造をしていますが、中でも問題になっているのがコバルトです。
市場情報会社S&Pグローバルの最新レポートによると、電気自動車の販売台数は2023年から2027年の間に倍増しますが、2027年にはコバルトが不足するとのこと。さらに、世界のコバルトの半分以上はコンゴ民主共和国から採掘されていますが、その採掘方法には環境問題や人権問題があることが指摘されています。
しかしコバルトは、このカソードの安定に欠かせないものです。バークレー研究所の研究員であるグオイン・チェン氏によると、コバルトのようなものを使わないと、これらの材料を充電したり放電したりするときに、層構造の安定性が低下するとのこと。
この問題の解決策の1つとして注目されたのが、食卓塩の同類である無秩序岩塩(DRX)です。バークレー国立研究所が主導するDRXコンソーシアムは、このDRXを使ったカソードの実用化に向け、研究を進めています。
研究によれば、DRXカソードは、現在よりも重量あたりのエネルギー密度が大幅に高いリチウムイオン電池につながる可能性があるとのこと。DRXは、結晶構造が層状ではなく立方体であるため、安定性のためにコバルトを必要としません。
また、リチウムイオンは従来の層状正極材料のように2次元ではなく、3次元で材料中を浸透することも利点です。チェン氏は「DRXカソードは、より多くのリチウムイオンを詰め込むことができ、より高いエネルギー密度が得られるのです」と述べています。
get stuffed with more lithium ions, which is why they offer more energy density,” says Chen. “We call this a lithium-excess cathode material.
— 引用:spectrum.ieee.org
訳:従来のリチウムイオン正極材料は、ニッケルやコバルトに頼ってきましたが、今では突然、多用途でフレキシブルなスペースができたのです。持続可能性は本当に大きな利点です。
チェン氏は、最大の課題は「何千回もの充電サイクルに耐えられる、安定した材料」を作ることだと述べています。DRXコンソーシアムは現在、この新しいカソードの商業化を目指しており、5年以内にEVバッテリー用のDRXカソードを実証する計画を進めているとのことです。
- Original:https://www.appbank.net/2023/10/07/technology/2586034.php
- Source:AppBank
- Author:岩佐
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