16億ドルを無利子で…スターバックスが人知れず「PayPalをも脅かす銀行」になったワケ





» 米軍開発の無人水中ドローン「マンタ・レイ」の外観が完全にSF超兵器



世界中に店舗を広げる「スターバックス」は、飲食店の中でも非常にユニークな存在です。同社は一般的にはカフェとして知られていますが、財務的な観点から見ると、スターバックスはいまや銀行となりつつあります。

スターバックスは現在、顧客から約16億ドルもの金額を借りています。そして、あのPayPalとも競合し、世界的な大銀行すら恐れている存在です。ではどのようにして、スターバックスは人知れず銀行となったのでしょうか?



*Category:テクノロジー Technology|*Source:PolyMatter ,Wikipedia

スターバックスの歴史と、人知れず銀行になった経緯

スターバックスの最初の天才的なアイデアは、新しい体験を作り上げたことだと言えるでしょう。スターバックスは単なるレストランではなく、私たちの生活の中で、仕事場と家庭の中間である「第3の場所」としてデザインされました。


これらの理由に加えて、スターバックスが成長したのは、その優れたブランド力、顕著な一貫性、そして間違いなくそのコーヒーの味のおかげです。スターバックスはフランチャイズに頼らず、すべてのプロセスや演出を厳しく管理していました。

また、場所を探すのも非常に上手でした。不動産データベースを運営するZillow社のCEOによると、通常の住宅が65%上昇する間に、スターバックスの店舗近くの住宅は96%も上昇するといいます。


これは、スターバックス自体の影響力とも言えますが、同社が他社に先駆け、将来性のある地域を見つけ出す能力に優れていることも示しています。

これらの優れた能力により、スターバックスは、1971年にシアトルに第1号店がオープンして以来、1990年には84店舗、1995年には677店舗、1996年には日本初の店舗がオープンし、2000年代に入ると3,501店舗、2008年には16,680店舗となりました。


その勢いは、ピーク時には1日に7店舗以上が新規オープンするほど。しかし、この頃からスターバックスには「早く大きくなりすぎた」デメリットが見られるようになります。

スターバックスの失速と創業者の秘策

この頃から、スターバックスのブランド力は徐々に落ちつつありました。これには、世界的な不況の影響を指摘する声もあったものの、マクドナルドとの競争激化、飽和状態への懸念、顧客の不満の高まりなどを無視することはできません。


当時の取締役であったハワード・シュルツ氏の社内メモには、品質よりも効率とスピードを重視してきたことへの疑問が率直に書かれており、会社が「魔法」を失ったことが丁寧に示唆しされていました。

このメモを書いたシュルツ氏は、事実上、現代のスターバックスの創始者です。同氏は1982年にスターバックスを引き継ぎましたが、当時は太平洋岸北西部に4つの店舗を持つ小さなカフェに過ぎませんでした。


シュルツ氏は2000年に退任しており、中国を中心とした国際的な事業展開に時間を費やしました。しかし2008年、当時の3ヵ月間の業績が史上最悪となり、再びシュルツ氏はCEOに復帰することを求められたのです。

就任からわずか1ヵ月後、シュルツは思い切った決断を下します。彼は600万ドルの利益損失を覚悟の上で、すべての店舗を1日閉鎖することを決めました。その日、当時13万5,000人いたバリスタたちは、コーヒーの注ぎ方、お客さまへの対応、細部への気配りなど、基本中の基本を再確認しました。


その年の暮れには、企業レベルで同じような大会議が開かれます。この会議には3,000万ドルの追加費用がかけられ、1万人がニューオリンズで3日間の会議を行い最新の情報を得ました。

この会議の結果、スターバックスはなんと2008年に600店舗を閉鎖し、2009年にはさらに300店舗を閉鎖します。これにより、サービスの質が改善され、再び愛されるスターバックスとしての立ち位置を戻していきました。

スターバックスが「規制されない巨大銀行」になった方法

もう1つの施策が、「スターバックスカード」の導入です。2021年現在の支払い方法では、現金やクレジットカードだけではなく、スターバックスのアカウントに予め金額をチャージし、その金額から支払いを行うことができます。これは、スマホのアプリからも支払いが可能で、無料ドリンクと交換できる「スター」のもらえる数が2倍になります。


これは革命的とは言えませんが、スターバックスのアプリは同業他社のアプリと比較しても人気があります。 スターバックスの規模と顧客ロイヤルティのおかげで、人々はかなりの額のお金をスターバックスの口座に入れることに躊躇しません。実際、アメリカとカナダのユーザーの41%はスターバックスにお金をチャージして支払っているそうです。

ユーザーがスターバックスに預けた金額は、2019年末の時点では15億ドルにのぼります。米国の全銀行の85%が10億ドル未満の預金しか保有していないことを考えると、これは驚異的な金額です。


顧客はもちろん、最終的にはこのお金をコーヒーに交換しますが、それまでの間、知らず知らずのうちにスターバックスに15億ドルを0%の金利で貸し付けています。スターバックスは、このユーザーの「気前の良い」投資金を、より多くの店舗を建設したりすることに使えるのです。

スターバックスにとっての大きな利点はまだあります。このお金の約10%は、忘れ去られたり、失われたりして、使われることはありません。つまり、この15億ドルの10%分はスターバックスが丸儲けできるということです。


また、スターバックスは法律的に銀行ではないため、残高は基本的に現金で引き出せず、コーヒーのみが対象となります。つまり銀行のように、大量の引き出しに備えて、一定額の現金を用意しておく必要もありません。そして、金融規制も回避し、預かったお金は好きなように使うことができるのです。

その気になれば、スターバックスは本格的な通貨を作ったり、他のブランドと提携して広く利用できるモバイル決済システムを作ったりすることすらできるでしょう。例えば、スターバックスのギフトカードは、すでに顧客がプレゼント用のお金の代替手段などとして利用しています。


このようなことは、通常の銀行にとっては非常に恐ろしいことです。韓国第3位の金融グループのCEOは、スターバックスを「単なるコーヒー会社ではなく、規制されていない銀行」と呼んだといいます。

巨大銀行となったスターバックスが次に何をするのか、最終的な目標は何なのかはまだ誰にも分かりません。ただ少なくとも、スターバックスは単なるカフェではなく、誰もが無視できない大きな存在であることは確かです。






Be the first to comment

Leave a comment

Your email address will not be published.




CAPTCHA